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2016/8/26 (金)

【燕三条×ものづくりセミナー】第一回 <SEMINAR REPORT>

【燕三条×ものづくりセミナー】第一回 <SEMINAR REPORT>

イベント開催日時
8月26日 (金)
~ 8月26日 (金)

【燕三条×ものづくりセミナー】第一回 セミナーレポート
ものづくり企業が担う「IoT」の未来について考える
ー 開発における課題解決の糸口は燕三条にある ー
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2016年8月26日(金) 三条ものづくり学校 3F 301号室 Libraryにて開催
主催:三条ものづくり学校


【燕三条×ものづくりセミナー】シリーズの第一回目のテーマは、近年話題のIoT(アイオーティー)。IID 世田谷ものづくり学校に入居している株式会社デジタルステージの熊崎代表をお招きし、IoTの近年の動向や今後の展開を伺いながら、ものづくりのまちである燕三条地域の企業におけるIoTへの役割や今後のビジネスの可能性について考えていくセミナーを開催しました。

イベント詳細はこちら▽
【燕三条×ものづくりセミナー 第一回】ものづくり企業が担う「IoT」の未来について考える

【燕三条×ものづくりセミナー】第一回 セミナーレポート
ものづくり企業が担う「IoT」の未来について考える

ー開発における課題解決の糸口は燕三条にあるー

#1 燕三条に秘められた可能性
#2 ITの時代はもう終わった
#3 IoTの本質の一つは“便利だったら良い”
#4 事業規模や企業規模よりもアイディアが勝つ時代
#5 IoTにチャレンジしませんか?

 

 

 #1 燕三条に秘められた可能性 

「東京にオフィスを構えるベンチャー企業には多くの若い優秀な人たちが集まっていて、コンピュータのソフトを作ったりアンドロイドを作ったりクラウドシステムを考えたりしていますが、プロジェクトを進めるうちに誰しもが“ものづくりが出来ない”という問題にぶつかる。燕三条地域のものづくり事業者の方々と東京のベンチャー企業が交流を持つようになれば、新たな可能性が見えてくるのでは?と、希望を持って燕三条に来ました。」と熊崎さん。

 #2 ITの時代はもう終わった 

熊崎さんは、テレビ番組のブランディングやCG製作、大手企業のWEBサイトのシステム構築の他、企業のコンサルティング、自治体の防災システム関連など多種多様なプロジェクトを行ってきました。色んな事業に関わる内に、いつしか全ての事柄の本筋はつながっていると感じ始め、“みんながハッピーになれば良い”という思いを一つの軸にして取り組むようになったとの事。そんな中でも今までに携わってきた事業の多くが、IT分野のものでした。

「IT企業ってもう古いんです。インターネットの世界だけで戦うのは難しく、IT企業の競争も激化しているし参入新兵も少ない。やり尽くされちゃってる感がありますよね。シリコンバレーでもインドでも日本でも、僕の周りでは今投資されているのは、ITではなく、ほぼ全て100%、IoTの案件と言っていいかもしれません。僕自身も最近は“IT企業をやっています”と名乗ることがちょっと恥ずかしくて、早く“IoT企業です”と言わなきゃいけないなと思っています。」

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 #3 IoTの本質の一つは“便利だったら良い” 

今回のセミナーのテーマである「IoT」とはInternet of Thingsの事で「モノのインターネット化」を意味します。最近ニュースなどでもよく耳にする話題のワードですが、その考え方はあまり理解されていません。どういった解釈をすれば良いのでしょう。

「“面倒臭いの嫌だから便利にしよう!”というのがIoTで進化しているものづくりの本質となっている一つの基本的な考え方です。かっこよければいいじゃん、感覚的に楽しければいいんじゃない、みたいな時代になってきました。なので、杓子定規でどうこう考えるとIoTは絶対上手くいかないしユーザーの望んでいる事にはつながりません。“何が楽しいか”を大切にするのがIoTを用いてのものづくりのヒントになります。」

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IoTの市場で産業別に分けた時に投資が一番大きいのは自動運転の分野で、各国の自動車メーカーが競い合っているといいます。

「主要なプレイヤーであるGoogleも自動運転の分野を狙っています。Googleは、Google Earthの精度を高めていくために人工衛星を20~30個飛ばして、カバーしきれないところはソーラーで動く永久に飛び続けるドローンをリアルタイムモニターで地球全体に飛ばして旋回させる計画をしています。それを自動運転に応用していくという戦略も持っています。更に、自動車分野だけではなくドローンの分野も注目されています。Amazonなど色んな物流の拠点を持っている小売店がドローンによる効率的な配達の方法や航続距離の伸ばし方について研究や実証実験を重ねています。」


「Bistro」という猫の顔認識ができる自動えさやり器の動画も紹介されました。

 

ものづくり事業者が大きく世の中を変えていく

「こういったイノベーティブやものづくりの進化によって、ビジネスモデル全体が大きく変化していく。」と熊崎さん。ものづくりがサービスそのものや人のライフスタイルに大きな影響を与えた事は、産業革命以降ありません。しかし、IoTの世界ではものづくりが主軸を握っていきます。熊崎さんのお話から、“ものづくり事業者が大きく世の中を変えていく”という未来が見えてきました。

「例えば、スマートフォンは今は非常に便利だし簡単と感じますが、いずれそれでネットショッピングする事も面倒になっていくでしょう。いつも決まっている必要なものを発注するには、ボタンが一つあればいいじゃないですか。ものづくり事業者でボタンを作れる人がいたら、人類をスマホ地獄から解放してあげる事ができます。技術とかデバイスとか…そんな難しい話ではなく、Iotによる進化の一つは今までの常識にとらわれず、“イノベーションでもっともっと便利に”というところにあるのです。IoTを用いたビジネスの始まりは、一緒に楽しいものを作ろう。便利なものを作ろう。それだけでもいいと思います。日常生活の中の“困った”や“煩わしい”を見つけて解決すれば世界的なビックビジネスが始まるかもしれません。」

 

 #4 事業規模や企業規模よりもアイディアが勝つ時代 

「IoTは非常に破壊的なイノベーションと言われています。いきなりベンチャー企業がパッと現れて寄せ集めの技術で革命的なイノベーションを起こしてしまう。こういった事をやると基本的に大企業が安穏とちょっとずつ進化しながらやってきた今までのビジネスが全て成り立たなくなってしまいます。」

IoTは誰もが簡単に実施できるレベルまで進化してきているようです。「インターネットを含めて情報伝達が非常に早いので、良いアイディアで良いものが出来れば広めていける。」との事。

「事業規模や企業規模は関係なくてアイディアが勝つ時代です。お金をかけて製品を作り、何年も検査に費やす必要がなくなってきているので、どんどんスピード感が増してきています。そういった今の流れに産業基盤構造の担い手となっている人たちは危機感を持っていますが、ベンチャー企業はチャンスです。ものづくり事業者とプログラムを作れる企業が良いアイディアを元にタッグを組めば、新しい未来を築くことができます。」

全ての企業は、新しい技術に関係しなければ生き残れない

「もちろん古き良き時代のものは残りますが、全世界の全ての業種業態で破壊的なイノベーション(=IoT)が起きるという風に予言されているのです。大企業でも飲食店でも全ての企業は、何か新しい取り組みをどんどんやっていかないと生き残れない、それくらい変化の度合いが早いので、気がついた時にはもう遅い、という時代が来ます。」


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シンギュラリティー

自動運転の世界は目を見張るスピードで進化しています。その理由は“AI”にあるようです。

「シンギュラリティーという言葉を知っていますか?技術的特異点(人工知能が人間の能力を超える事で起きる出来事とされ、テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまう未来予測の事)と言われています。AIが人間と同じくらいのスペックを持ってしまう時、シンギュラリティーによりAIが自分の中にAIを作ってしまうのです。AIは半導体だから休まないので進化のスピードが早いんです。なので人間が超高速で30年かかってやる事をAIは2分でやってしまうのです。」

Googleやテスラは自ら製作した車で160万km以上の自動運転走行実験をしました。しかし、その結果プログラム修正しなくてはならない問題点はそれほど多くは見つかりませんでした。それだけ長距離を走って時間をかけて実験しても、実際の現実世界では良いデータをとれる確率は低く、進化が遅いのです。
そこで、行われているのが仮想走行というシミュレーションです。コンピュータの中に街全体を作り上げ、それをAIで制御させ、様々な危険な状況を作り上げます。そこを、AI自動運転プログラムに1日あたり約500万kmも毎日走行させているのです。
AI技術の進化により、爆発的なスピードで自動運転は進化しています。

 

 #5 IoTにチャレンジしませんか? 

2015年にGoogleは、自社開発の人工知能ライブラリ「TensorFlow(テンサーフロー)」をオープンソース化して公開しました。商用利用も可能なので、人工知能(AI)の研究者、学生、アプリ開発者、企業(家電や自動車などのメーカー)まで、GoogleのWEBサービスで使われるのと同等のソフトウェアを、道具として使用する事が可能になっています。

こういったオープンソース化された人口知能を使ってIoTにチャレンジするにはどういったステップを踏めば良いのでしょうか。

step.1 センサーを付けてデータ収集する
step.2 解析し、AIにロジックを作ってもらう
step.3 近未来的体験を与えられるか

「まずはものに感知センサーを付けてデータ収集をします。次に解析をします。AIが出した答えに対して“良い・悪い”と判断するのを繰り返すだけでAIが勝手にロジックを作ってくれます。なので解析の後はAIに頼った方が研究開発は楽です。プログラムを書くよりデータ量を集める事が大事なのです。そして、一番アイディアで大変なのは“最終的に出来上がったものが何を与えてくれるのか”というところです。“かっこいい”だけではダメで、近未来的な体験でなければいけません。ものづくりがものづくりで終わってしまったら、それはIoTのイノベイティブな発明とは言えません。」

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新しい形のサービスを作る時のマーケティングのヒント

「IoT分野でヒットしているものに共通する3つのキーワードがある」との事。新商品開発のヒントにしてみてはいかがでしょうか。

1.シェアリングエコノミー
所有しないで共有するという考え(Ex.Uber、airbnb)
2.ライフバリューの再来化
“面倒くさい”をなくす、ストレスをなくすというところに焦点を絞る
3.カスタマージャーニーマップ
ユーザーになりきってサービスを考えていく

 

リーン・スタートアップ

「実際IoTを始める時は、やり方が大事です。無駄がないプロジェクト管理で素早くプロトタイプを完成させて実証実験を繰り返していくのです。本来小さな企業は、プロジェクトをいくつも作って成功も失敗も経験しながらでないといくつもIoTをする事は無理ですが、リーン・スタートアップという手法を使っていけば、非常にシンプルで低コストで新しい世の中を変えるようなプロジェクトを生み出し続ける事ができるのです。なるべく簡単にシンプルに考えて、プロジェクトを早くやっていく、という事が大切です。」

 

今すぐやる

「この世の中にはすごく大きな変化が起こっていくので、なるべく早く対応していかなければ生き残っていけない。なので、今日皆さんに最も伝えたいメッセージは、“今すぐやる”という事です。」

 

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<セミナー講師>
熊崎隆人(株式会社デジタルステージ代表取締役、CRYPTOMERIA,inc代表取締役、株式会社日本アド取締役)
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株式会社デジタルステージ代表取締役、CRYPTOMERIA,inc代表取締役、株式会社日本アド取締役。グッドデザイン賞金賞並びに中小企業長官賞、東京インタラクティブアドアワーズ、ニューヨークフェスティバル、その他、数多くの広告賞などに輝く。東海大学工学研究科建築学専攻修士課程修了。大学時代は意匠設計分野において1位で卒業。大学院在籍時期にフィンランドデザインセンター主催の「未来のコミュニケーションデザイン」コンペティションにて金賞受賞。在学中にCRYPTOMERIA,incを設立。現在でも代表を務める。日本テレビNEWSZERO、every、フジテレビめざましてれび、みんなのニュースをはじめ多くのテレビ番組のブランディング、CG製作を行う。NIKEやアメアスポーツといった外資系スポーツブランドをはじめ多くの大手企業のWEBサイト・システムを構築。経営、IT、マーケティング、ブランディング、パブリシティーの分野で行政、上場企業、中小企業にて数多くのコンサルタントを務める。同時に株式会社デジタルステージにて経営者をしながらも、ベンチャー企業への投資・育成活動を行う。近年ではIoTの分野で様々な事業にも取り組んでいる。