「もっと良く、もっと良く」の精神がEPONを一流ゴルフブランド足らしめる。
そんな魅力が巷で語り継がれるゴルフブランドの「EPON(エポン)」。
会社の始まりは昭和の中期まで遡ります。ブランドの母体は、1950年に遠藤栄松さんにより創業された遠藤製作所。名だたるゴルフメーカーのOEM製造を徐々に任され、燕三条のいち製造業社だった遠藤製作所が、その後ゴルフブランド「EPON」を立ち上げ、名声は世界へと広がります。
彼らが創業以来、一貫して持ち続けているものとはいったい何か?。
17歳で遠藤製作所を興し、自社ブランドの「EPON」を立ち上げた創業者の遠藤さんと、時代を超えたものづくりの価値に迫ります。
エポンゴルフ株式会社の創業者であり取材にもご対応くださった会長の遠藤栄松さまが2019年11月14日に逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。(記事は2019年2月に行われました取材を元に作成しています。)
新潟の製造業から生まれたゴルフブランドのエポン
現在は、本社に併設する直営店のほか、世界各国の販売店と提携。製品は日本全国、そして世界中のゴルフプレイヤーから支持されています。
その姿勢とはどんなものなのでしょう。
エポンゴルフでは製品の品質に対する探求心をブランドとして何よりも大切にしています。そのものづくりの妥協の無さは、一般消費者の私たちからは考えられないほどです。
数千万円もかけて金型を作り、いざ量産直前と言う状態から、それを破棄して開発プロジェクトを白紙に戻したこともしばしばあるといいます。
「当時は『この型で行こう!』と金型を作り、量産する手筈を整え終えた段階。ところが、出来上がった製品にどうしても納得がいきません。製品に対して設定したコンセプトと、製品が出来てから感じた実際のターゲット層がフィットしない感じがしたのです。そうこうして、機械を返却したこともありますよ」
会社が大きな損失を被ると分かっていても、製品に少しでも気になるポイントがあればゼロからやり直す。それほどの品質を追求する確固たる決意があるのがエポンゴルフです。
顧客からの圧倒的な信頼を得るエポンゴルフ
エポンゴルフと長年取引を続けているKadogen株式会社代表の長野さんもエポンの魔力に取りつかれたひとり。「使う人の気持ちに寄りそってものづくりしているからこそ、単純に『良い物』や『美しい物』の先にある『何か』への探求を続けているんだと思います。そんな理念で続けることが、次の時代に繋がるエポンを作っているのだと思います」
株式会社ものづくり学校代表の高山も、過去に気づけばエポンのファンになっていたと語ります。「きっかけは、お店で試打をする際。選んだブランドがたまたまエポンでした。いかに遠くに飛ばすかではなく、持った時の感覚の良さが決め手でした。純粋に、他に考える必要もなく、『自分のゴルフ』のことだけを考えられるクラブ」そう語ります。
エポンゴルフのものづくりを支える、遠藤製作所
創業当時の1950年代の事業はミシン部品の製造。需要が高まっていた契機を見て事業化しました。その後もキッチンツールの製造や器もの、ゴルフクラブヘッドなど、扱う製品は時代やニーズに合わせて変化してきました。
そして、エポンゴルフを設立した理由こそ、圧倒的に採算度外視で、品質を追い求め、自分たちの製品やお客様と100%で向き合っていきたいという創業者の意思表示でした。
設立当初は大幅な赤字経営。母体の遠藤製作所が上場すると、一層会社の赤字が注目されるようになり、「税金対策の会社か?」「会社を閉めたほうが良いのでは?」といった話まで出るようになりました。高度経済成長の時代。ゴルフの市場がまだ出来上がる前でした。
エポンゴルフ設立から一貫して変わらない想いは「良いものを追求し続ける」こと
ただ、良い製品を追求し続けること。
社員が新しいクラブを試作し、満足感と共に「以前のクラブと比べこう変わった」と説明しても、創業者の遠藤さんが返す言葉はいつもひとつでした。
「これではまだまだ。自分たちはもっと良い製品を作ることができる」
社員はみなそう檄を飛ばされてきました。
現状に満足しないとはつまり、変化し続けているということです。
実はエポンゴルフの製品も少しづつ変わっているのです。ゴルフクラブの変化は本社横に構えるショールームで見ることができます。さらに、他社製品の分析も欠かせません。人気がある製品はどんなところが評価されているのか。製品をわざわざ分解し、素材や構造などの研究を日々重ね、改良を繰り返しています。
エポンゴルフの研究には莫大な予算がかかります。採算度外視だとしても、“良いゴルフクラブ”を作るためであれば、投資を惜しみません。品質や機能は絶対条件。さらにそれ以上の「何か」がないとお客さんへは届かないと考えています。
「考えさせない」「道具のせいにできない」クラブこそが最高品質の証。
それは「考えさせないクラブ」だと言います。
ゴルフはおおよそ4〜5時間のゲームで、プレー中はほぼ考え事をして過ごすことになります。「今日は風が強めだ」「あの人、自分よりも飛ばしたな」「なかなか調子が出ないな」
そんな事を考える余白のあるスポーツなので、思考を巡らさない時間はあまりありません。ところが、プレイヤーがボールを打つときだけは違うと言います。ボールを打つ際は何も考えず、すっと“ゾーン”に入る必要があるのです。
このように無意識のまま打つと、『ボールが止まる瞬間がある』と表現します。
まるで時が止まるような瞬間を作り出せるのは、最高の品質を追い求めるエポンゴルフのクラブだからこそかもしれません。絶対的な品質が土台にあるからこそ、それ以外の不安要素や雑念を考える余地のない、良いクラブが出来るのです。
エポンゴルフの製品を使うプレイヤーは「道具のせいにできない」と口を揃えます。エポンゴルフが生み出す製品は、いつも最高品質だと分かっているからです。創業以来、真摯にものづくりに励んできたエポンゴルフにとって「道具のせいにできないクラブ」は最高級の賛辞です。
101%を目指すエポンゴルフのものづくり
構造を設計した後は、3Dプリンターでヘッドの原型を作ります。何個も作り、ベストな形状を確認。最終的に決まった形状の製品をヤスリで削って形を整え、研磨をすることで綺麗な断面を作ります。
期待通りの製品=100%の顧客満足はあたりまえで、エポンゴルフのクラブを使った際の記憶にプラスαのちょっとした「あれ?」を残すようなものづくりを目指します。
この様なものづくりを進める上で大事なことは、工程に余裕を持たせることです。ギリギリで進めてしまうとすぐに納期に追われ、「これで間に合わせるしかない」といった発想になります。そんな流れでは、エポンゴルフの求める101%の製品は出来ません。
ものづくりにおいて、真剣勝負で本当に良い製品を作るためには、余裕を持ったスケジュール管理が必要なのです。
通を唸らせるエポンゴルフの店舗と、人にフォーカスした社内体制
お客様がゴルフをする上でどんな悩みを持って店舗に来ているのか。どれくらいのスコアを持つ方なのか。ゴルフに何を求めているのか。一人ひとりと向き合い、しっかりと対話する中で、どんな道具が必要かを提案します。
対応するのはゴルフ経験が豊かなスタッフで、お客様のゴルフ経験や力の強弱、ライフステージによってどのようなクラブが良いかを提案しています。クラブの角度を調整したい場合は隣にある工場へ持っていき、微調整。調整後のクラブをその場で試打することも可能です。エポンゴルフに来るお客様は本物志向で、ちょっとしたニュアンスの違いに違和感を感じる人もいます。細かい部分まで納得のいくチェックをできる体制が整えられているのです。
また、社内で販売や企画を担当するスタッフでは、部署間の異動も頻繁に行われます。開発から営業へ、営業から開発に行くことも。幅広い仕事を経験することが、スタッフ自身や会社の成長に繋がると信じているからです。会社の都合ではなく、人の成長のために異動をするのが特徴です。
新潟県と日本を背負って立つエポンゴルフ
そして遠藤製作所のキャッチフレーズは「限りない未来の創造」です。
どちらも本質的に言っていることは同じ。ものづくりの会社として最先端を追い、時代の先頭を走る覚悟の現れです。ゴルフメーカーとして、新しい時代を作るには、いつも今以上の品質の製品作りを目指すより他ありません。
遠藤さんがいつも語る、「まだまだ。もっと良くできる」がエポンの根本。どこまで行っても、決してたどり着く先がないのが、エポンゴルフのものづくりの道なのです。
一方、今後のことを尋ねると、「未来はわからない」と言います。
遠藤さんが遠藤製作所を創業した1950年には現在のエポンゴルフの姿は想像すらできなかったでしょう。時代は変わるし、会社も変わっていくのです。
良い製品を開発するには、やりきる経験が必要です。ここまでやったと突き詰めることが出来れば、そこには反省が生まれるからです。
社員全員に、先人たちが残した揺るぎないエポンゴルフの理念が刻まれています。業界トップランナーの挑戦はこの先も終わることがありません。
「まだまだ、もっとその先へ」
〒959-1289 新潟県燕市東太田1137
TEL:0256-64-5551
http://epongolf.co.jp/