3Dプリントからスケートブレードまで。需要に即し、新技術を取り入れてきた研磨屋・徳吉工業
有限会社徳吉工業(以下、徳吉工業)の徳吉淳社長は嬉々として話す。その言葉通り“ワクワク”を軸に、新たな技術やサービスを積極的に取り入れてきた徳吉工業。樹脂製の3Dプリントの研磨に、BOXに入れた分だけの商品を研磨する「BOXオーダー」、燕市のものづくり企業と一緒にフィギュアスケートブレードの開発を行う等、今ある技術に固執することなく、挑戦を繰り返す徳吉工業のバイタリティとは。前例のない技術に挑む心意気を聞いた。
複雑な形状でも美しく。バレル研磨を得意とする徳吉工業
研磨には主に2つの方法がある。自動回転する研磨剤に部品をあてて人力で磨く「バフ研磨」と、樽の中に小さな石のような研磨剤と部品を入れ回転させて磨く「バレル研磨」だ。
自動車部品や機械部品を主に研磨する徳吉工業は、バレル研磨を得意としている。バレル研磨の特徴は、複雑な形状の加工品も研磨もできること。バフ研磨は一方向に部品を当てて磨くが、バレル研磨はメディアと呼ばれる小さな石状の研磨剤が、様々な方向から対象物にあたることで表面を削るので、手の届かない細かい箇所まで研磨できる。
工場を見渡すと、さまざまな形の機械やメディアが並ぶ。プラスチックやセラミックなどの素材、三角・丸・四角などの形状、湿式・乾式どちらにするか、どのメディアを選んで研磨するかも、知識と経験がものをいう。徳吉工業は創業以来、その経験を着実に踏んできた。
業界でも珍しい技術に挑む。ニーズに応えながら、できることを増やしていった
以来、バレル研磨だけで営んできた徳吉工業。国内でも数少ない樹脂製3Dプリント品の研磨にも成功し、全国各地から問い合わせが来るのだという。他社ができず徳吉工業に磨ける要因は何なのか。徳吉さんは次のように答えてくれた。
そんな際、燕三条地場産業振興センターの3Dプリンター活用技術研究会が「表面のざらつきを何とかできないか」と打診。話を受けた徳吉工業はメディアの選定や回転数を研究し、今までの知識と経験をもとに3Dプリント研磨の技法を確立した。当時3Dプリントの研磨は国内唯一といわれ、バレル機のメーカーから「徳吉さん、どうやっているんですか?」と聞かれるほど珍しかった。ざらざらの3Dプリント品がつるつるとした感触になった。
技術だけではなく、受注方法にも気を配る。宅配便BOXに入れた分だけ研磨する新たな注文方法「BOXオーダー」を始めた。指定の箱に研磨してほしい商品を詰めて送ると、研磨されて手元に戻ってくる仕組みだ。金額によって仕様は異なるが、税別20,000円のプランなら素材や形状はバラバラでもいい。アルミ発色の業者がやっていた手法からヒントを得て、顧客の新規獲得を目指して始めた取り組みだった。
そんな研究会の始まりを教えてくれた徳吉さんは実は研究会の会長。氷と接触するエッジの加工と製品の販売を担当した。エッジを加工する専用の機械を購入し、新しい技術にも挑戦し、「燕ブレード」の名前でWebサイトを立ち上げ。フィギュアスケートを習う学生やフィギュアスケーターからの受注が入った。「ゆくゆくは販売も強化していければ」と意欲も見せてくれた。
「ワクワクするならまずは突き進んでみる」を大切に
「3Dプリントもフィギュアスケートブレードも、新しいことに挑戦するきっかけの多くは頼まれごとからでした。特に『他でできなかったんだけど、徳吉さんならできるかなと思って』と相談されると、ワクワクしてしまいます(笑)」
技術を広げてきた背景にあるのは徳吉さん自身の楽しむ心持ちだ。今でも徳吉さんは多くの展示会に出かけるようにしている。自分の範囲外の新しい知識に出会える可能性があるからだ。いつだってワクワクを軸に行動してきた。
仕事を楽しむ。
その姿勢を貫いているからこそ、新しい技術を広げてきた徳吉工業。これからも自分自身が心踊る挑戦を重ねていくことだろう。
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