日本のものづくりを支える、治具。精密加工で要望に応える丸山製作所
治具の製造において、特に精度を必要とされる自動車関連の企業や金型屋から信頼を得ているのが、三条市にある株式会社丸山製作所(以下、丸山製作所)だ。燕三条では、治具の会社は地場のお客さんとの取引が多い中、丸山製作所はその技術力の高さから県外企業からの引き合いも多い。三条市にある一企業がなぜそこまで高い技術力を持っているのか。専務取締役の丸山鉄兵さん(以下、鉄兵さん)にお話を伺い、その理由に迫った。
金属加工には欠かせない、精密な治具をつくる丸山製作所
治具の製作に高い評価を得る丸山製作所だが、治具以外に特殊工具も製造しており、現在の製造シェアは、約6割が治具で、4割は特殊工具だという。
高精度の治具をつくる丸山製作所の工場には、ワイヤーカットから旋盤、プレス機までさまざまな機械が並んでいる。焼き入れと塗装以外のすべての加工は自社内で加工が可能だ。
客先であるメーカーが製品をつくる上で重要な役目を果たす治具。精度が求められているからこそ、職人の技が光るのだ。また、治具は基本的に数個単位での少量の製作依頼が多い。多くても両手に収まる程度の数だ。だからこそ、機械でなく、職人が作業したほうが効率が良いということもある。
売上が落ち込んだときに治具製造に活路を見出した
当時、大阪ではノギスやマイクロメーター、直尺などの測定器をつくる会社が多く、そうした会社からの依頼でノギスをつくるようになった。時代は高度成長期。工場がどんどんできているころで、ノギスの需要も高く、当時は一日1,000丁も量産していたという。そのころから、製造の内製化を意識するようになった。
とはいえ、治具や金型はあくまで自社用。ノギスを主製品に事業を推し進めていたころ、他の測定器大手メーカーがノギスの日本シェアの半分以上を占めるように。「それなら今の機械・技術で他にできることをやろう」と東京や大阪の大きな商社に治具受注の営業をかけるようになった。
「社長は他企業と組んで硫黄が入ったステンレスを開発するなど、材料の開発から関わっていました。そのおかげで、会社として名前が広まっていった。それと、東京の神田に自動車系の商社街があって、1社やれば『丸山さん便利だよ』と口コミで広まっていった感じですね。といっても、治具だけではなく、いまはディーラー向けの特殊工具の製造もやっています。ニッチなところを攻めていく傾向にあるんですかね」
販路が厳しくなったタイミングでの方向転換、取引先に役立つ特殊工具の製造。たとえ狭い産業だろうと、丸山製作所はその時々の最善の選択を繰り返してきたのだ。
地元での繋がりも増やして、燕三条の事業者と協働で仕事を
「いまは医療系の部品製造に参入できればと、より効率的に作業ができる5軸加工機を増やしています。競合他社が少ないので、可能性があるというのももちろんですが、一番の理由は『いろんなものをつくったほうが楽しい』という社長の考え。治具という珍しい器具をつくる会社だからこそ、楽しく働いてほしいという想いも強いのかもしれません」
「難しいニッチな治具や工具を作りすぎて、地場からの受注がなくなってしまって。僕が専務になってからはなるべく地場からも仕事を請け負うようにしようと、窓口となって他企業に仕事を依頼することも多いです。ここら辺は包丁鍛冶や板金屋、プレス屋が多い地域。焼き入れ屋の技術も高いから、焼き入れが必要な製品を関東に持っていくと喜ばれるんですよ。」
一度は県外に取引先を探しにいった丸山製作所。大手自動車関連会社など高精度な治具を要求する企業との取引経験をもとに、地場の仕事に戻ってきた。これから燕三条の事業者とどんな新しい仕事をつくっていくのか。
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