シャーリングから梱包まで。一貫して請け負える体制づくり
今回お邪魔したのは、“鋼材を切る”事に特化してきた熊倉シャーリング有限会社(以下、熊倉シャーリング)。多くの製品のもととなる鉄鋼の素材(鋼材)を仕入れ、扱いやすい大きさに切断し、加工工場に渡すシャーリングと言う仕事を長年この地で営んできた。
しかし、取引先の各工場も機械化や内製化が進み、シャーリングだけでは経営が難しくなりつつある。そこで次に目をつけたのが、材料仕入れから製品完成までの一貫生産。シャーリングから製品化までをまるっと請け負える企業への変貌。熊倉シャーリングの挑戦は始まった。
シャーリング企業としての誇りを胸に。引き継いでも変えなかった社名
現在はシャーリングだけではなく一部、最終製品まで一貫した製造を請け負う。それでも、事業がシャーリングから始まった事実は今でも大事にしている。社長職が熊倉正さん(現会長)から正人さんに代替わりしても、会社名を変えずに「シャーリング」の言葉を残した。
切るだけじゃない。熊倉シャーリングのものづくり
「例えば、農機具なら塗装するから表面処理加工はせず、建設関係なら外で使うから表面に亜鉛加工を施し、耐食性が良いようにします。その鋼材が最終的にどんな用途で使われるかによって、加工のやり方も変えるようにしているんです」
取引先が扱いやすいように加工方法を逐一変えているが、熊倉シャーリングは切ることだけが仕事ではない。切ってプレスをして組み立て、最終製品を作ることもできる。それを可能にしたのが、タレットパンチプレス機だ。
「通常、金属を加工すると端材が残りますが、シャーリング屋である当社の場合、必要な分だけカットしているので、無駄な端材が出ない。そこに違いが出てくるんです」と正人さん。
確かに、必要なサイズだけカットできる知見と経験を持つことはシャーリング屋の強みだ。では、なぜ最終製品製造まで請け負えるほど幅広い加工ができるようになったのだろうか。
シャーリング屋から、完成品まで請け負える会社へ
それでも、農機具だけの鋼材加工で生きていくのは難しく、農機具から建設関係へ、電子機器関係へとより精密な機械をつくる企業へ鋼材を卸すようになった。金属加工の工場が多い燕三条地域で材料屋から鋼材を仕入れ、切断する企業は必要とされていたのだ。
「でも、加工業者のライン化が進んで、シャーリング屋の需要が減少してきてしまって。お客さんの立場で考えると、シャーリングから最終製品までまるっと頼めたほうがいいだろうと、他の加工技術にまで手を伸ばすようになったんです」
また、熊倉シャーリングは自社製品も開発。
肥料を素早く、均等に撒ける「肥料散布機 けん太君」だ。20kgの肥料を入れて、粉状や粒状など好みの状態や量を選択し、一輪車を押すように畑の上を走らせることで、肥料を散布できる。
開発のきっかけは正さん自身が畑に石灰をまくときに欲しいと感じたことで、以前機械メーカーにいた知人とともに開発した。
地域の経営者仲間と一緒に、燕三条の未来を描く
そこで、正人さんはプレス屋や研磨屋、商社、印刷会社などの燕三条の若手経営者と一緒に「EkiLab帯織」を立ち上げた。
子どもだけでなく、大人も同じ。中心人物のひとりとして関わる正人さんは「工場と関わりがない人にとって、ものづくりは距離があるもの。それでも、一般の方が製品をつくりたいと言ったときにEkiLab帯織に頼めるように。そんなものづくりが身近になる場をつくっていきたい」とこれからの燕三条の可能性に目を輝かせていた。
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