滑らかで美しく、狂いの少ない木材加工。同業からも一目置かれる高い品質 有限会社倉茂木工所
同業の木工会社がそう口を揃える企業が、新潟県三条市にある。椅子やテーブル、ソファなどの脚物*と言われる家具、その「脚」パーツ製造を主力とする有限会社倉茂木工所(以下、倉茂木工所)だ。
価格競争からの逸脱。鍛冶関連製品から、脚物家具の道へ
番頭から職人へと舵を切った先々代。職人としての経験はなかったが、工場で1〜2年働き、機械1台と鑿1本で会社を興した。
「当時は洋物家具がよく売れている時代で、加茂市も例外ではありませんでした。ですが、箱物家具には丸棒をつくる必要はないため、旋盤加工機は持っていなかった。反面、うちはずっと農工具の柄をつくっていたので、棒状の木工製品をつくることが得意。その技術を椅子やテーブル、ソファなどの脚物家具に活かせるのではないかと考えたんです」
付き合いのある材木屋などから脚物を必要とするメーカーを紹介してもらい、販路を開拓。当時は新興住宅ブームに伴って家具の売上も伸びている頃で、メーカーからも「どんどん作ってくれ」と促される時代だった。倉茂木工所は時代に後押しされ、旋盤を必要とする脚物家具に注力していったのだ。
納期管理を改善し、顧客からの信頼に繋げる
「母が毎日夜8時まで仕事をしているような忙しい時期で、人手が足りないから手伝ってくれないかと誘われたんです。当時、私もバイクの練習時間を確保したかったタイミングでした。夜や土日に働くことで、仕事もバイクも両方できるんじゃないかと思い入社を決めました」
工場での勤務は初めての経験。だが、子どもの頃から自動加工機の操作を手伝ったり、出来上がったものをコンテナに集めたりと工場にはよく出入りしていたため、抵抗はなかった。
納期通りに納品するにはどうすればいいかを考え、作業工程表を作成し、誰でも見える場所に掲示。いつどんな仕事が来るかを掲示板に書いて、毎日確認してもらうことを徹底した。しかし、職人は倉茂さんよりも年上の熟練工ばかりで、当初は受け入れてもらえなかった。だが倉茂さんは諦めず、5〜6年も声をかけ続けることで少しずつ納期に改善が見られるようになっていった。
高品質を保つ、倉茂木工所のものづくり
こうした木材は、角材へと加工する「木取(きどり)」、丸く削り出す「旋盤」、表面を仕上げる「研磨」、見た目の美しさを整え表面を保護する「塗装」の工程を経て製品となる。どの工程も製品の良し悪しを左右することには変わりないが、その中で最も重要なのは「木取」だと倉茂さんはいう。
「我々の業界では木を読むというのですが、木目に沿ってスッと切断していくんです。その分、端材はたくさん出ますが、ここで木目に沿って切らないと製品になったときに狂いが出てしまう。ロスを恐れてやらない会社もありますが、長く使ってもらうために木取は絶対に必要だと考えています」
だが、倉茂木工所は、塗装だけでも最低4つの工程を踏む。
まずは、木目が生きるよう木地に着色し、次に、上塗材の密着を良くするため、下塗と呼ばれる塗装をする。その後、表面研磨の工程を経て、ようやく上塗と呼ばれる最終的な塗装に入る。
どんな製品でも同じ品質で。倉茂木工所の当たり前
「食事に行くにしても、どこへ行くにしても、テーブルの脚を触ってしまうんですよね。同業者で研修旅行に行ったときには周りから『よくテーブルの下を覗いているよね』と言われたこともありました。表面処理の技術が表れるのが、肌触り。ずっと触っていたくなる脚はよい脚だと思います。特に岐阜県飛騨高山市の木工屋は本当にすごい。脚を組み立てたときの継ぎ目がわからないし、技術も設備も群を抜いていると思いますよ」
工場に吹く、新たな風。業界の波に左右されないために
「最近は、新卒や20〜30代の採用に力を入れています。ものづくり業界に関わりのない人からすると、何をやっているか分かりにくい仕事。だからこそ、募集要項の欄には仕事内容を具体的に書くように心がけています。最初は未経験で問題ないのですが、私たちが求めているのは単能工ではなく、多能工。今はできなくとも、将来的には複数工程を担当することに意欲のある人を採用しています」
「今やっているのはメーカーから依頼された仕事なので、そのメーカーの業界が繁忙期でない時期は手が空くんです。だから、そんな時間を使って、木材でインテリアを作れたらと考えています。燕三条にはプロダクトデザインに長けたデザイナーもいるし、デザイナーの卵もたくさんいる。まだ具体的な商品までは考えられていませんが、地域内の横の繋がりを活かしながら、自己満足ではない、ちゃんと売れる商品を作りたいと考えています」
下請け工場から、メーカーへ。倉茂木工所はいま若手社員と共に新たな一歩を踏み出そうとしている。すべての工程を丁寧に加工している工場だからこそ、長く愛される製品が生み出されるのだろう。
そんな未来に思いを馳せた。
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